宝船・公演の軌跡 002「あいつは泥棒」

 更新がちょっと間に合ってない雰囲気のこの企画。
 インタビューという名目で酒ばかり飲んでいるからだ、と反省。
 第三弾となる今回は、もはや説明不要の有名劇団「ナイロン100℃」の安澤千草さんと人気上昇中の若手劇団「アーノルドシュワルツェネッガー」の水野顕子ちゃんが登場。サバサバした安澤さんとフワフワした水野さんと私のかみ合わない会話をお楽しみください。
 第3回 安澤千草×水野顕子
第1回 高木珠里×仲坪由紀子 / 第2回 中村たかし×三土幸敏
第4回  日比大介×加藤雅人 /  第5回 清水宏×いけだしん

 

野村「ちなみに友香ちゃんとの出会いは?」
安澤「ケラマップで一緒になって…それまでは舞台を見たことはあったのかなあ。最初は女優女優した人なのかなって思った。でも会ってみたらすごい腰が低い人で、もうその頃から友香ちゃんって人のファンになったの。友香ちゃんのファン」
野村「どういう所で?」
安澤「人間ぽくて…足りない所も含めて愛らしい人だなあって。作品も好き。前回の宝船の公演も好きだし、人魚の話も好き。だから(宝船に)出たいって思ってて(1998年に上演した、友香ちゃん作、河原君演出の『ミンシン』。千葉さんを始め、豪華なメンバーだった)
野村「ホントに?」
安澤「うん。でも出たいわって言うのも憚れるし、いつか出して欲しいなーって思っていたら、こんなに早く呼んでもらって。二つ返事で『やりたい!』って」
野村「嬉しいねえ」
安澤「あと手術した時にお見舞いに来てくれたの。昔気質の性格もあって、恩を返したいってのもあったのよね(舞台で足の腱を切断。そのままステージをこなす)
野村「カッチリしてるよね」
安澤「だからホラ、ヤンキーが好きっていうのは礼儀とかしっかりしてるし、女房子供や友達とか守るっていうかさ、そういうちゃんとしてる所がいいなって思う(みんなで女子トークをしている時、「私はヤンチャで元ヤンキーって人に弱い」と安澤さんが発言。大いに盛り上がった)
野村「挨拶しない人は好きじゃないってところとかね」
安澤「電車の横入りとかすっごいうるさい。車内で携帯でしゃべっている人とか好きじゃないの。最低限のモラルは守りましょうって。ありがとうとごめんなさいが言えない人間もダメ」
野村「安澤さんに躾られると真人間になりそうだよ。私は今回の稽古で安さんに初めて会ったけど、すごいいい人だって言うのは友香ちゃんから聞いていた(安澤さんのこと)」
安澤「え。じゃあ相思相愛」
野村「安さんもそうだけど、ナイロンの役者さんって友香ちゃんのこと好きだよね。峯村さんとか、長田さんとか」
安澤「村も好きだって言ってた。みんな愛らしいって言ってる。素直で」
野村「そうだね。腹にイチモツあるけどね
安澤「そうそう。毒づくけど友香ちゃんの理にはかなっているんだろうねって」
野村「悪口が爽快って所はある」
水野「悪口は言っているけど、そこにいる人たちにとっては全然報われるようなことを言ってくれたりする」
野村「(驚いて)報われるって?」
水野「女の人に対してあまり悪く思わない」
野村「いや、思うな。思うよ」
水野「前に一緒に飲みに行って、もう12時近くなって帰ろうかってなった時、友香さんが、男の子だけ帰しちゃって…ってか偶然帰る形にして、女の子だけで二次会に行ったんです。『私、男がいるとつまんないのよね』って言ってた」
安澤「でも女の子好きかもね」
野村「そうね。でもやっぱ男が好きよ」
水野「その時『ぶっちゃけようぜ』とか言ってくれて、女性に優しい方だなって思ったんです」
野村男がいてもぶっちゃけるけどね
水野「…っていうのも最近分かってきた」
野村「水野さんのことは友香ちゃんから評判だけ聞いていて『若くて可愛くて面白い子がいる』って」
安澤「友香ちゃんは見た目の美学があるよね」
野村「ある。『あの子カワイイよね』って言うと『いや、別に可愛くないね』って、拗ねた男子みたいなコメントをしたりする」
水野「好みがあるんですかね?」
安澤「けっこう厳しいよね」
水野「その場面に直面した時はないけど」
野村「よく言ってるよ。『あたしゃ思わないね』的なことを」
水野 「私は友香さんのことをあまり良く知らないのかもって…」
野村「じゃあ友香ちゃんのことはどう思うの?」
水野「友香さんのことは…いそうでいない感じの(ゆっくりと)」
野村「絶対いそうじゃない(きっぱり)。髪の毛は妖怪みたいだし
水野「そういうビジュアルの面じゃなくて。性格的に。あんなに女性に対して心が広かったり…(全員の反応を見て)あれ?」
野村「どうでもいいけど、同じコメントを今までで3回言っているからね」
安澤「すっごい思ってんだよ、きっと」
水野「もしかしたら、すごく私に優しくしてくれたからかも」
安澤「いつもは優しくされないの?女性に」
野村「妬まれるんじゃない?カワイイって」
水野「いえ、そんなことはなくて、劇団とかでも女性に嫌われる役が多くて…」
野村安澤「(ほぼ同時に)それ、役の話だよね?
水野「(気にせず)あんなに素敵な女性見たことない(うっとり)」
野村「え?何の話?…それにしても今回の二人は友香ちゃんをベタ褒め」
水野「そうですよね。何か気持ち悪いですよね
野村「そ、そんなことは…」
水野「でも友香さんの話で面白かったことがあって、去年の5月に共演させて頂いた時に、オムニバスの3つ目のお話だったんですよ。だから、待ち時間が1時間あったんですけど、1つ目と2つ目のお話の時、その日のお客さんに全然受けなくて、静かになっちゃってて。『出辛いじゃないですよね』って友香さんに言ったら(悪そうな顔で)『せいぜい退屈した時間を過ごさせてやるよ』ってお客さんに対して言っていて(えんぶゼミ主催で故林さんのプロデュース。友香ちゃんはいちおうメインゲストとして呼ばれていた)」
野村「すごいね。お金払った客に、無駄な時間を過ごさせる気マンマンなんだ」
水野「普通、『うちらの話になった時にもっと場を暖かくして、良かったって言わせようよ』って言うのかと思ったんですよ。先輩だし。そしたら…」
野村「そんなこと言う訳ない」
安澤「でも友香ちゃんぐらい言えるようようになりたいけどね」
野村「その公演では面白い話があって。友香ちゃんはその公演でゲストって形だったから、お弁当が支給されたらしいのね。そんで、弁当を取りに行ったら、若い男の出演者に『そのお弁当食べていいんですか?スタッフのですよ』って言われたらしくて」
水野「そうなんですよ。それでその時は友香さんあまり強く出れなくて、あ〜ってなっちゃって、後ですごくそれを嘆いていて、可哀相だなーって」
野村「嘆いていた所じゃないよ。大激怒だよ。水野さんの前では嘆いていただけかもしれないけど。私の前では…もう…。(ダミ声で)『弁当がよ〜』って。買ってくりゃいいじゃんって(笑)」
水野「(溜まらないという感じで)も〜カワイイ。素直で。犬をクシャクシャってする感じにクシャクシャってしたい!」
野村「(やや気味悪げに)そうお? 今回の稽古場はどう?」
安澤「すごく楽しい!いつも稽古は楽しいんだけど、今回は色んな人がいるから…なんか…。本番とかもちょっと先だったらいいのにって思う」
水野「他の所に客演しても楽しいんだけど、ここは違うって感じで…。なんでだろう…」
安澤「なんでなんだろうねえ…。理由は分からないけど、客演って楽しいわ、これからも客演したいわって思った。大体客演するとナイロンのありがたみとか分かったりするじゃない?」
野村「そりゃあねえ。今回だって稽古場ジプシーの時もあったし」
安澤「でもそういうのがあまり苦だと思わない。こういう環境の方が強くなるかもねって思った。ナイロンだと練習の時にセットとかも組んでくれるけど、そういうことがない分、想像力がつくっていうか。修行の場になるかもね
野村「修行の場…ですか」
安澤「私、すごい真面目なこと話してない?あれ?」
水野「ウチの劇団は稽古場ジプシーなので、慣れてますけど…でも何か私、言われましたよ。ウチの劇団の主催とかに」
野村「なんて?」
水野「キミはいじめられないようにしなきゃダメだよって」
野村「(話の展開について行けず)え?は?」
水野「女優さんの先輩にいじめられないようにしなよって言われて。ちゃんとしたしゃべり方とかしなきゃダメだよって。ウキャーウキャーニャンニャンとか言ってたらダメだよって」
安澤「(やや引き気味に)…普段そんなことを言っているの?」
水野「言ってないですけど(笑)。でもでも、絶対しゃべり方とかも人よりゆっくりだし、だから、稽古初日とか私、すごいビクビクしてて。でも良かったのは多分代役をやらせてもらったことで。やってなかったら自分の出番までずっと稽古を見てたりだけだったし、そうだと私がどういう人か分からないじゃないですか。でも代役をやらせてもらったことで、普段自分の役だと絡めない人とも絡ませてもらって、色んな役できるし、良かったなあって(稽古の始めの方は役者のスケジュールの都合のため、何役も代役をやっていた)」
野村「まあ…あまりにもスゴ過ぎて、代役の意味ないだろ的な感じだったけど」
安澤「オリジナル過ぎて」
野村「震えるってト書きで狂牛病の牛みたいに足元がガクガクしてたしね。あと、絶対聞き逃せなかったんだけど、いじめられるってのはさあ、『私、美人キャラだから、女の先輩に妬まれていじめられる』っていう被害妄想じゃないの?」
水野そんなこと思ってません!
野村「美人キャラってか美人だから…」
水野思ってません!
安澤おばさんのひがみに…
水野違います!違います!
安澤「でもね、どうしてそう思うんだろうね?」
水野「今までそういう目にあってきたからかも」
安澤「そんなに礼儀がなってない訳じゃないし」
野村「礼儀に厳しい安さんが言っているから。まあね、水野さんの話は大概にしておいて、友香ちゃんの話をしようか。仲坪さんと安さんが出会った日のことを聞いたんだけど。なんか、友香ちゃんがベロベロに酔っぱらって、深夜に仲坪のウチに安さんを連れて行ったとか」
安澤「そう。でも私素面だったんだよ」
野村「わはは(笑)。酔っぱらって部下連れて帰って来た迷惑父さんみたい。しかも他人のウチだし」
安澤「(しみじみ)ユキちゃん、偉かったよ。初対面の人を泊めてくれて(仲坪さんのこと)」
野村「次の日、熱出していたからね。風邪ひいて。友香熱だよ」
安澤「友香ちゃん、そういう所に迷いがないからね。だから『行ってみちゃおうかな』って思って」
野村「友香ちゃん、あの頃酔っぱらって『安澤さんはすごくいい人だ。ユキちゃんとは家も近いし仲良くなるに違いない』って言っていたからなあ」
水野「友香さん、結構酔っぱらいますよね?」
野村「(鋭く)結構?結構じゃないよ、ものすごく酔っぱらうんだよ」
水野「そ〜なんですか〜。この間、稽古場でなんか…(言いよどんで)Hな言葉を男の方たちが言っていて…(言いにくそうに)」
安澤何?Hな言葉って?
野村「お、安さん。彼女の口から言わせたいんだね?」
水野「それは…全然Hじゃないんですけど、私だけちょっとHだなって勝手に思っただけで…」
野村「(イラついて)どっちだよ?」
水野「たいしてHじゃないんですけど、でも、誰も反応してなかったのに、友香さんだけが『ムラムラするの?ムラムラするの?』って聞いてきて」
野村「ムラムラしたんだ(笑)?」
水野「でもそれは私も悪くて、前に『私ムラムラします』って言ったことがあって…」
野村「聞いた。飲み会の席で水野さんがそう言ったって。私、それを聞いた時、馬鹿だなーって思って」
水野「そんなことまで言っているんですか?」
野村「言うよ、あの人は。だだ漏れだよ。言われたくないことは口止めしないと。友香ちゃん基準で言って善し悪しを判断する訳だから」
水野「でもそれを言っちゃった時に…そんなこと私あまり言わないんですよ、普通は言わないじゃないですか」
野村「言わないよ、そりゃ」
水野「でも、友香さんに…10歳も年上の方の前でポロっと言ってしまって、それを言えちゃったのは友香さんだからだし、それを受け入れてくれた…ムラムラのキャパシティが、私は嬉しかったんです
安澤「(絶句)」
野村「ム…ムラムラのキャパ…?はあ…左様でございますか…」
水野「その時に友香さんと通じ合った気がしたんですよ」
野村「ごめん。水野さん、真面目に馬鹿みたいだね
水野「馬鹿みたいですよね〜。流して頂いて結構です」
安澤「(気を取り直して)通じたかもしれないよ、ね、分かんないもん、他人にはさ」
野村「安さん、そのフォローはむしろ優しくない」
安澤「友香ちゃんに話を戻すとね、最早ね、友香ちゃんがとんでもないことを言ってもそれが当たり前みたいになってて。その時、え?と思っても『友香ちゃんだもんね』ってスルーしているのかも。端から見たらスゴイことでも友香ちゃんがすれば別に普通、みたいな。友香マジックだね」
野村「新井マジックにしてやられてるよ」
安澤「はてな?って思う私の方がおかしいのかも、みたいな」
野村「いやいやいや、安さん正しいよ。自信持ちなよ(笑)」

以下、友香ちゃんのすごすぎるエピソードに花が咲く。すごすぎて掲載不可能。
 このようにさっぱりした安澤さんですが、今回の舞台では女らしさが匂い立つような魅力的な女性を演じてます。これは必見ですって。
  あと、アーノルドの皆さん、水野さんは女性の先輩にいじめられてませんので、ご安心を。ちなみに男性の先輩はメチャクチャ可愛がってますよ。
第1回 高木珠里×仲坪由紀子 / 第2回 中村たかし×三土幸敏
第4回  日比大介×加藤雅人 /  第5回 清水宏×いけだしん