宝船・公演の軌跡 002「あいつは泥棒」

 いよいよ幕が開けちゃいました。劇団宝船「あいつは泥棒」。もう見ました?まだ?
 公演の予告コーナーのはずだったこの企画も、すっかり遅れを取ってしまいました。原因は毎日飲んでいるからです。繰り返しちゃいますけど。
 まだ見てない人はこの企画の狙い通りに、もう見ちゃった人は「こんな人なんだ」と芝居の感慨に耽るもヨシ、また見に来てもいいもんですよ(馴れ馴れしい雰囲気でアピール)。
 第四弾は飲み屋で愛を込めて「馬鹿のツートップ」と称された「THE SHAMPOO HAT」の日比大介さんと「ラブリーヨーヨー」の加藤雅人君。馬鹿トークが大いに盛り上がりましたよ。
 第4回 日比大介×加藤雅人
第1回 高木珠里×仲坪由紀子 / 第2回 中村たかし×三土幸敏
第3回  安澤千草×水野顕子 /  第5回 清水宏×いけだしん

 

日比「(突然声音を使って)ハイ、そういう訳でね…
野村「(びっくりして)いきなり仕切らなくていいよ。普通にしゃべって。まあ、二人こうやって並ぶと、何か面白い感じが…あの、日比君、何を見てるの?
日比「え? あー、隣のビルは何かなーって思って」(このインタビューをやったのが稽古場の外の半野外。一番劣悪な環境)
野村「えーっと、…(困って)集中してくださいってしか言えないけど…」
日比「話す場所はここでいい?…中央線ってあっちに走っているのかな?
野村「(ついて行けず)え?中央線?」
日比「あのビルが見えるってことは中央線はこう(手で一方向を指しながら)走っているんだよね。地下にいると方向が分からなくなるな。(突然切り替わって)ま、いいや、始めようか?」(日比君は地図を見るのがものすごく好き。いけしんもそう)
野村「(あまりの独りよがりぶりに)あ…あ…。そう…ね。宜しくお願いします。まずは友香ちゃんとの出会いから…」
加藤「僕はハイレグ(ジーザス)で見たのが初めてで…。普通に狂人って思いましたから」
野村「まあねえ。ハイレグに出てる役者はみんなそう言われるねえ」
ま「三角木馬に乗ってましたからね
日比「(怪訝な顔で)三角木馬?」
野村「三角木馬に乗っている役だったんだよ」(「FUCK YOU VERY MUCH」というハイレグジーザスの公演にて。三角木馬に乗った友香ちゃんが歌謡ショーの司会に扮していた)
日比「僕が友香さんと、三年ぐらい前にうちに出てもらった時※1に初めてお会いしたんだけど…。ハイレグは見てねえな。あ、千葉さんと三人でやった※2のは見てて、顔は知っていたんだけど、お話したのはシャンプーの時」(※1「雨が来る」でシャンプーハットさんに出演。※2「薔薇の連帯」というプロデュース公演。千葉雅子さんと新井座長、野村の三人で決行)
野村「舞台で見るのと普段の時に会うのじゃ違うからね」
日比「俺のハイレグの人のイメージって何となく…こう何だ…。狂人?
野村「繰り返してるね」
日比「なんだてめえこのやろう、的なね。でも友香さんはすごく女っぽい人だなーって思いましたよ。品のある…ね」
野村品ねえ…
日比「ハイレグの持っているイメージと違って…。まあ、ハイレグの人たち全員がそうだったんだけど。あと、スキーとかやって…運動神経もいいんだなって」
野村「いや、スキーしか上手くないけど。あと…卓球?」(中学生の時卓球部だった。素振りは様になっている)
加藤「僕は一緒にスノボに行ったことがあります」
日比「みんな結構仲良いんだよね。うちら、そういうのは全然ないんだけどね。シャンプーハットに関すればね」
野村「仲良くないの?」
日比「みんなで旅行に行くとか…そういうのは。皆無だね」
野村「ほら、赤堀さんと『今日は一緒に服を買いに行こうぜ』とか」(「THE SHAMPOO HAT」の作・演の赤堀さん)
日比「ないね。気持ち悪いね」
野村「ハイレグではイクマとノリオが待ち合わせて服買ったりする」(山田伊久磨と財団法人ノリオchanのこと)
日比「マジで? あり得ないね」
野村「一緒に飲みに行ったりとか?」
日比「昔は行ったけどね、でも俺、酒飲めないし、煙草吸えないから、みんなが行っても俺は行かないみたいなね」
野村「ハブられているんじゃないの?」
日比「そうかもしれないねえ。ハブだね。みんな煙草吸うからさ、うち。稽古場でも吸うしね。本当は吸って欲しくないんだけどさ、昔、結構煙草を吸っていたから言えないんだよね」
野村「今さら健康志向かよって感じだもんね」
加藤「ウチも全員吸いますね」
日比「まあね、煙草の話はさておき(←自分で始めたのに)、友香ちゃんの話だっけ?」
野村「そうそう。前に共演した時、友香ちゃんと飲みに行ったりした?」
日比「したねえ。でも殆ど芝居の中で絡んでないからね。基本的にそんなに話をした訳でもないんだけど…。だから今回、なんで僕を誘ってくれたのかってのがね…どういう風に僕を見てたのかってのは気になるよね」
野村「そうだねえ。日比君のことは『ハンサムめの役者さんで…』っていうようなことを言ってて、私も最初そう思ったんだけど、今は面白めにしか見えないなあ
日比「なんでだろうね。そこは気になるけど、呼んでくれたことが全てって思うから」
加藤「ずっと昔、うちの姉ちゃんがハイレグの飲み会に参加したことがあるらしくて。なんでかは分からないんですけど」
日比「(ちょっと呆れて)知らないんだ」
加藤「まあ、行って、友香さんと会ったらしいですけど、そのことを僕が一番最初に友香さんと話した時、大先輩だと思っていたので、緊張しながら言ったんですよ。姉ちゃんのことを友香さん絶対覚えていないんですけど、こんな他愛もない質問につきあってくれたのが、すごい嬉しかったのを覚えています」
野村「友香ちゃんは人の話につきあうね。なんか話題を振ると、こっちはもういいよ、って思うまでつきあってくれる。もうこの話終わったよ、って思ってもいつまでもしゃべっている
日比「色んなことに興味がある方なんでしょうね」
野村「…あ、る、かなあ…」
日比「(いきなり)俺さっきからこの機械スゲー気になっているんだ。どんくらい撮れるの?記者の人たちはこれをもっているのかな?」(ボイスレコーダーのこと。別に珍しいモノでもない)
野村「5〜6時間は余裕で。でも今までこれを気にした人はいけしんと日比さんくらい。しかもいけしんはこれを見て『007だ』って言ってたからね。ありえねえよ」
日比「(いけしんの)携帯もおかしいしな」
野村「液晶が白黒だしね。化石だよ、あれ。今回の稽古場はどう?この人アホで面白いなあとか思わない?」
日比「思わない」
加藤「全く思わない」
野村「まあ、二人は馬鹿ツートップだからね
加藤「僕は馬鹿じゃなくてアホなんですよ。でもあれですよね、それはホントに馬鹿だと思って言っている訳ではないんですよね」
野村「そうそう尊敬して言ってるんだよ。好きだから言ってるって思って」
日比「知ってるよ。俺に惚れているんだろう。分かってるよ」
野村「…引いた。ごめん。マジで引いたわ。馬鹿ツートップって言ったら俺に惚れてるって返されてもなあ。話は戻るけど、日比君は友達つきあいもないの?」
日比「あんまないんだよね。長い友達…10年15年ってつきあいの友達はいるけど…じゃあみんなでスキー行こうとか釣り行こうとかって未だかつて一回もないからね」
野村「スキー行ったり温泉行ったり…」
日比「ないない」
野村「赤堀、バーベキュー行こうよ〜とか」
日比「ない。皆無。やだ」
野村「嫌なの?」
日比「こっちも嫌だし、向こうも嫌だし」
野村「ハイレグは前、年に一回くらい別荘でみんなで過ごしたよ。ラブヨーも一回那須の方にみんなで行ってたよね」
加藤「あれは、ハイレグの旅行にタケオが参加して影響されたから。帰って来て『あれは最高だ。道端で一升瓶抱えている野村さんを見た』とか言って」(「ラブリーヨーヨー」の役者。すごいキレイな目をしている)
日比「(ハッとして)もしかしたら、俺抜きでみんなどこかに行っているかもしれないな」
野村「あー。避けられているフシはあるかもね。そこまでないっておかしいもん」
日比「大阪に行った時、俺は後輩連れて別の所行っていたけど、あの時みんなでどこかに行っていた可能性もある」
野村「うちらも大阪に地方公演行った時、男二人がこっそり色街に行っていたりしたことはあるけど、それとは明らかに違うもんね。外されている感じだもんね」
日比「分かんないけどね」
野村「でも例え外されても気にならないんでしょ?」
日比「全然気にならない。本当に気にならない。関係ないね」
野村「日比君、今回もあんまり一緒に飲んだりとかしてないもんね。うちら毎日飲んでいるよ」
日比「本当に?よく金持つね」
加藤「…なんとか…」
野村「でも飲みに行ったってね、実のある話なんかひとっつもしないからね。大体覚えてないもん。誰が馬鹿だとかって話を延々してる」
日比「もっと…演劇論交わそうぜ(熱く)」
野村「話したことない。いけしんがたま〜にやってるけど」
日比「俺やりたい」
野村「いけしんが演劇論を友香ちゃんにぶつけてて、友香ちゃんが困惑している風景を何回か見た。昨日もいけしんと友香ちゃんが芝居の話で、私とまんぞう(加藤君の呼び名)とたかし君が『あの女とヤルにはどうしたらいいか』とか話してて、同じテーブルだったのに、ぱっくりと二つに割れていた。その間には深くて広い大河が流れていた
加藤「小さい頃いじめられていた話とか…」
野村「そうそう。朝の4時に、今しなくてもいい話ばかり」
日比「でもあれだね、楽しい現場だよね。単純に皆さん、それなりに場数も踏んでて経験も長いし、自分のやり方は別々だけど、面白いものを作ろうという意気込みはありますから、それがあればね、稽古場って楽しいじゃないですか」(日比さん注:清水兄さんを除く。清水さんはそれなりどころではない)
野村「腐ったらダメだね。こんなもん何が面白いか分からないってみんなが言っている現場は面白い訳がない」
加藤「(感心してほら、日比さん、馬鹿じゃないですよ
野村「いやいや。まんぞうも何か言いなよ。このままだと馬鹿の名を一身に背負うことになるよ」
日比「(笑顔で)まあいいんだよ。女の子がいっぱいいる現場はいいんだよ
野村「(まんぞうに)ほら、まんぞう。この人馬鹿じゃん
日比「だってさ、シャンプーに女の子いないんだもん」
加藤「ミートゥーですよ」
野村「なんで英語だ。まあラブヨーも男ばっかりだね」
加藤「女の人がいると屁もこけない」
日比「こきゃいいじゃん。でもニンニク料理を食わないようにしてる」(この日、一緒に飲みに行った仲坪嬢はギョウザを何枚も注文。日比君の相手役なのに。報われないよ、日比君
加藤「俺、ガムとか噛んでますから」
日比「やっぱり?」
野村「女の人がいるだけで?」
日比「そりゃそうだよ。男現場なら関係ないもん」
野村「来るじゃん。お手伝いの子とか」
日比「来ないよ、あんまり。来たら…即ガム購入だけど。でもあれだね、まんぞうは紳士だね」
野村「まんぞうが?」
日比「基本的には紳士だよ」
野村「っていうか恐れているんだよね」
加藤「そうですね。今度はイエスマンってあだ名がついてますから」
野村「そうそう、なんでもイエスって言っているからね」
加藤「それマズイなって思って。ノーって言わなきゃって思っているんですよね」
日比「ダメだよ。深みがないよ、男として。男。(いい声で)男の話しようか」
野村(おずおずと)あの、友香ちゃんのことを話すインタビューで男道の話をされても…」
日比「(聞かずに)漢と書いておとことね」
野村「ごめん、ここで男塾を開かないで、新井さんの話をして。新井さんの演出とかどう?」
加藤「ああ、僕は2回目なんですけど、すごく気を使う方だなあって」
野村「馬鹿とか言わないしね。このヘタクソとか」
日比「モノとか投げないし」
野村「投げない。それに今は投げられない
日比「でもね、俺、稽古場に入る前から友香さんはそんなことをしないって何となく思ってた。ストレスがあってもそれを人に絶対向ける人じゃないってね。感覚的に。理由はないんだけど」
野村「ヒステリーとか起こされると、こっちも聞けなくなるからね」
日比「友香さんの演出ですごく印象に残っているのは、場の稽古をやって、次の場の稽古になる時に必ず『ありがとうございました』って言うんですよ。それは僕はね、ものすごい感動してね。こんな演出家はね、見たことないんですよ」
野村「そうだね。それはいい話だね。今まで馬鹿話ばかりでどうしようって思ってたけど、ここに来てまともな話がやっと出たね」
加藤「(野村に)日比さん、馬鹿じゃないです
野村「さっきからそれを繰り返してるね。『日比さん馬鹿じゃないです』って」
日比「いや、馬鹿だけど。でも演出家の人ってね、怖いことを言う人がいっぱいいるじゃない。『役者なんだからこれ位やって来いよ』とかね。そういうのイラッてするじゃないですか。人間ですからね。でも友香さんみたいに言われるとね『こんな僕ですけど、あなたのために一生懸命やります』って気になるんですよね」
野村「役者を馬鹿だと思ってない。すごく尊重してくれる」
日比「僕、前回の作品ってビデオでしか見たことないんですけど、役者さんがすごく生き生きしてるなって思ってて」
野村「そう、役者がのびのびするよね。ほら、まんぞうも何か言いなよ」
加藤「(やや間があって)優しいですよね
野村「まんぞう、おまえ馬鹿ナンバーワンに躍り出る勢いだね
日比「どういう仕事でもそうだけどね、友香さんのような態度ってのは、人がついて来るためには重要なんだよね。カーテンコールでもそうだよ、『ありがとうございました』ってただ言うんじゃなくてね。きちんと心から言うことによって『ああまた来てみよう』って(長々と続く)」
野村「待って待って、日比君。もうカーテンコールの話にまで及んでいるんだ。幕も上がってないのに」(本番3日前だった)
日比「いや、締めの話をね」
野村「(心底驚いて)え?もう勝手にインタビューを締め始めているんだ。あれ?ほら、私の役目はね、忘れているかもしれないけど、司会っていうね…」
日比「わははは。まあね、芝居の話だけじゃなくて、役者じゃなくてもね…」
野村「(ムリヤリ遮って)今回の見所ってどこだと思いますか?」
日比「そうですね…芝居のね…」
加藤「(我慢できなくなって)すみません、俺、ションベン」
日比「俺が話している間に行って来いよ。見所ね…」
野村「あれ、どこにションベン行ったのかね?トイレあっちだよ」
日比「立ちションしてるのかな」
野村「じゃない。表の方に行ったからね。それでさっきの話だけど…」
日比「(聞いてない)あっちって…あれ…(外を見て)」
野村「何見てるの?」
日比「俺の自転車にね…」
野村「ションベンなんかしてないよ。そこまで馬鹿じゃないよ
日比「いやね、傷がついているように見えたからね
野村「日比さん自転車自転車ってうるさいね。傷くらいつくよ」
日比「(自転車の方を見てしみじみと)やっとの思いで買ったからね。見所か…まあ全部ですけどね」
野村「日比さん、稽古中によく笑うよね?」
日比「俺ね、真面目にやっているんだよ。もちろんだよ。(考えて)くっだらない所が魅力かな」
野村「くだらない?」
日比「くっだらないし、平均年齢30ナン歳? そんな大人が、くっだらないことをね。それを客観的に見ると面白い」
野村「客観的に見ないでよ。日比さんが稽古中に笑っているのを見て、たかし君が笑ってしまって『アバラが痛い。アバラが痛い』って」(演出家の前で場面の稽古をしている時、日比君が笑って芝居が止まったことも何度もある。その度に自分のことをビンタしている日比君を見るけど、効果ないのでやめればいいのに、といつも思う)
日比「俺ね、真面目にやればやる程面白くて、なんだろうね」
野村「シャンプーでも笑う?」
日比「笑わない。笑わない。逆にこんなヤツがいたら、ふざけんなよ、って言うような勢いだよ」
野村「…もうね、オシッコちびりそうだよ、そんなこと言ってさ。笑いの沸点が低い人がさ」
日比「そう。自分が立ってない時でもね、人の芝居見て笑っちゃうからね。くっだらなくて」
野村「確かに主張とかテーマとかないしね」
日比「でも面白いと思うんですよ、絶対ね」
野村「そう信じてはいるけど」
日比「単純に2時間を楽しみにして来る人は2時間分楽しんで帰ってくれると思いますけどね。主義主張はないけどね」
野村「(帰って来たまんぞうに)あんたは?」
加藤「キャラが被っている人がいないっていうのが、見所ですかね。退屈しないと思いますよ。ちなみに俺、馬鹿じゃないです
野村「ごめん、何を言ってもね、ますます馬鹿に見える」

この後、日比君の演技論といっぱいいっぱいの顔をした加藤君の「俺、馬鹿じゃないです」という言葉が繰り返される。
 「THE SHAMPOO HAT」では、普通と狂気の間をさりげなく演じ、人気実力ともに備えた日比君。今回の現場では稽古場に早く来て、自転車をうっとり眺める姿を目撃されたりと、愉快な一面ばかりを披露。舞台では、「THE SHAMPOO HAT」の日比君とは全く違うことをやっているのでお楽しみに。
  若いのに嫌みな位実力のある加藤君は、今回の芝居では3人の女性に翻弄される若者を好演。こちらもお見逃しなく!
第1回 高木珠里×仲坪由紀子 / 第2回 中村たかし×三土幸敏
第3回  安澤千草×水野顕子 /  第5回 清水宏×いけだしん